インタビュー02:健康情報工学共同研究講座

共同研究講座インタビュー 02
健康情報工学共同研究講座
インタセクト・コミュニケーションズ株式会社との共同研究講座
中村 亨 特任教授(常勤)

健康情報を工学的に解析し、活用する道を探る

生体情報を収集する腕時計型スマートウォッチなどのウェアラブル端末の発展・普及と、それが集めるデータは、健康長寿社会の実現に大いに役立つと期待されています。
しかし、今は個人個人で測っておしまい、になっています。貴重なデータは十分生かされていません。それをビッグデータとして集めて解析し、利用者の健康状態の把握や疾患発症の予測に役立てたり、健康に良い行動を促せるようにしたりして、データの価値を創造し還元してあげたい。そのための仕組みを研究しています。

新たな市場につながる基盤としての共同研究講座

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業がきっかけになって、「ヘルスケアIoTコンソーシアム」が2016年9月に設立されました。「健康データはユーザのもので、データ提供ユーザーにはインセンティブが還元される、健康情報流通社会」の創出を目的にしています。医療、食品、金融、自動車、電気機器、建築などの企業や大学・研究機関など100以上の会員がいます。この共同研究講座を開いたインタセクト・コミュニケーションズ株式会社も、コンソーシアムの発起人として当初から関わっています。
「健康情報に新しい価値を持たせる」という価値創造型の研究は、どちらかと言えば企業単独では苦手な領域で、大学などのアカデミアが得意とするところです。新しい領域で、さまざまな関係者とつながりを作り、これからのビジネスにもつなげたい。そんな時に、その分野に強い共同研究講座を企業が持っていることは、企業単独の時とは違う厚みを持つ広がりをつくる効果もあると思います。

企業と大学、両者に利益

私は学位取得以降、大学で研究を続け、2017年にこの講座の特任教授に着任しました。これまでの多くの例と少し異なり、基礎工学研究科の共同研究講座は、基礎研究の重要性を理解し、認めてくれるところが研究者としては魅力です。インタセクト・コミュニケーションズからの資金だけでなく、国からの科学研究費や、インタセクト以外の企業との共同研究など外部資金も得て研究を進めています。
国からの運営交付金が減り、大学は研究活動の水準を保つのが厳しくなっています。共同研究講座で新しくポストを作って研究者を増やし、大学の力を維持していけるのは、大学にとって利点は大きいでしょう。
一方、企業にとっても、大企業以外では基礎研究までにらんだ研究部門を企業単独で維持するのは難しくなっています。共同研究講座があれば、大学とつながりを深めたり、講座に社員を派遣することで人材育成の新しいキャリアパスを設けたり、新たなシーズを発掘したりすることもできます。講座を持つことで、会社の信用度やブランドイメージを上げる効果も期待できるでしょう。そういう広がりのある新しいタイプの産学連携だと考えています。